真梨幸子さんのみんな邪魔を読了しました。
昭和の時代に大ヒットした少女漫画のファンサークルである青い六人会。そこで繰り広げられるメンバー6人による愛憎劇がメインの小説です。
とても面白い小説であり一気に読んでしまいました。ミステリーとしても秀逸ですが、人間関係のドロドロが凄くいいんですよ。
青い六人会においてメンバーは本名ではなくあだ名で呼び合っており、名前は皆ヨーロッパ風です。
メンバーの1人であるガブリエルは黒木瞳に似ている容姿端麗なメンバーのアイドルで、蠱惑的な文章を書く才能があり、メンバーの相談に対して悩みを否定することなく、また押し付けがましいアドバイスをすることもなく相手の気が済むまで話を聞き、相手を励ますなど魅力的な人物です。
そんなガブリエルのことを他のメンバー全員が大好きであり、嫉妬が渦巻いている。本書は章ごとにメンバーを掘り下げており、皆が闇を抱えています。そしてガブリエルは最後の章であり、この人物は一体どういう人間なのだろうか?と最後まで引っ張る構成です。
メンバーのなかでもミレーユの章は特に面白い。
ミレーユは49歳無職のパチンカスです。母親の年金で暮らしており、母から金をせびってはパチンコに溶かし、たまに大勝ちするとパチプロになってお母さんを養ってあげるというなど、とても面白いキャラであります。
母親とは共依存であり母はミレーユを甘やかしていたせいもあり、彼女には生活能力がまったくない。
そんな彼女が母親が倒れて介護をすることになったのだからさぁ大変。49歳でも中身は我儘な少女ですから、介護なんてできるわけがありません。
彼女は一応母親のことが好きで介護も頑張ろうとするんですよ。でも無理なんですよね。ちゃんとした大人でも介護は大変なのに、ニートパチンカスには荷が重すぎたんです。介護の破綻に至る過程が絶望的であり、救いようがない。ミレーユ編が本書のMVPといってもいいでしょう。
本書はジャンルとしてはミステリーであり連続殺人が大きな謎として提示されるのですが、それよりも人間関係のドロドロのほうがメインです。
かなり容赦なく書かれていて登場人物みんな見てて痛いんですよ。でも人間って痛いものだと思っています。正常な人もそれなりに取り繕うことができるだけであって余裕がなくなれば痛いものなんです。
そんな痛い人物揃いの青い六人の会のメンバーのなかにおいてほぼ完ぺきな人物として描かれるガブリエルの闇とは?
最後まで楽しめた小説でした。