先日、元生徒と久しぶりに会って話してきました。彼は大学生になり一人暮らしをしています。分かりやすいように記事内では名前をたくみ(仮名)とします
大学生になって髪を茶髪にしたたくみ、彼女ができないことを嘆いていました。
私も女性には振られてばかりなのでアドバイスなどできるはずもありません。俺も自慢じゃないけど振られることはあっても自分から振ったことはないというと、たくみが「俺たちは何がダメなんですかね」としみじみ言っていました。
喧々諤々で議論したところ、結局もてるやつはもてるしもてないやつはもてないという結論になります。
たくみがいいました。「そういえば高校の時すげーもてるやついてさ」と話しだします。記事内では読みやすいよう、モテ男君の名前をカイトにします。
「カイトはバスケ部でさ、学校中の女の3/5くらいがカイトのことが好きみたいな勢いだったんだよね。残りの興味ないわ~みたいな女もカイトからいけば絶対付き合ったと思う。
「俺から見てもイケメンで身長高くてさわやかでいいやつでトークも面白いから当然なんだけどね」
カイト君の顔をみたいというと、たくみは写真を見せてくれました。俳優の吉沢亮に似ています。なるほどこれはもてる……。たくみと一緒に映るとイケメンが余計に際立つなというと、おい!本当のこというな!とショルダータックルをくらいました。
「それで、カイト怪我してねバスケ部続けられなくなってさ、そのときめっちゃ落ち込んでから俺が部に誘ったのね。」
部活動はアウトドア部。キャンプや釣りや登山などアバウトに楽しむ部活だったそうです。
「最初は楽しかったのよ、でもさすぐにカイト目当てで女の子がすごい入部してきたのね。」
「それでさ、うちは全員男でさ、女の子が入ってきたから喜んでたやつもいたけど、俺は微妙だと思ったの」
なんで?と聞くと「いやだってあからさまにカイト目当てなんだから俺等のこと眼中にないわけじゃん。でもだからといって入部拒否とかもできないわけじゃん?。いやこれどうなるのかなって」
カイト君目当ての女の子たちはもともとバスケ部のマネージャーをしてたみたいですが、バスケ部は10数人の部活で、マネージャーがそれより多い歪な構成だったそうです。あいつらやることないから普段はだべって話してたみたいだよとたくみはいいます。
そんなあからさまなことをするのか……と私は驚愕します。イケメン目当ての民族大移動……私には想像もつかない世界でした。
たくみの懸念は少しずつ表面化しました。
「そんでさキャンプいくじゃん?カイトもまだ全然初心者だから俺等が教えるわけね。でも女達全員カイトに群がるじゃん?テント張るにしてもカイトと取り巻きじゃなにもできないから、俺たちがまぁ偉そうだけど指導するわけね。それでカイトと違うグループになるとあからさまにテンション下がってさ。いやそうはいってもなーって感じだったけど」
アウトドア部の部員は当初、カイト君と民族大移動の軍団を快く受け入れたみたいですが、相手は交流をするつもりがまったくないので、険悪な雰囲気になっていったそうです。
「カイトがなんかごめんっていってきて、まったくおまえのせいじゃないよっていったんよ。たださ~カイトに責任はないけど原因だよなとも思ってた。そんでもってカイト誘ったのがそもそも俺だし、俺が原因中の原因じゃん~ってすげー自己嫌悪状態、みんなに悪いしカイトにも悪いし」
良かれと思ってやったことが裏目にでると精神的負荷が大きい……たくみもカイト君を誘ったことが後の民族大移動を引き起こすとは思わなかったのでしょう。怪我をした動物を保護した結果、生態系が荒れてしまった話を思い出しました。アウトドア部という生態系が、民族大移動によって崩壊しようとしている。
「バーベキューのときも片付けしないのよあいつら、二人だけやってくれたけど他はいっても無視。それでそのこと注意しても逆切れしてくるのね、ああこれはもうだめだって思ったわ」
「それで、みんなさもうあいつらと一緒に活動するのなしなありえねーってなってさ。それでさ、カイトが泣いちゃってさ。おまえのせいじゃないんだし泣くことないだろっていっても泣いちゃってさ。もう本当地獄だったわ俺も泣けばよかった」
たくみと私でイケメンにはイケメンの苦労があるよな~と脱線して盛り上がりましたが、それでもイケメンに生まれたかったな~イケメンの苦労を味わいたいよな~。もてない男の苦労なんて味わいたくなかった。イケメンにはイケメンの苦労があるんだよおまえらとかいって、溜息つきながらマウントとりたいわと同じ結論になりました。
私は聞きました。その後カイト君が部活やめる流れになった?
「いや顧問にこういうことあっていったらさ、あーあそうかっていって……それじゃってアウトドア部は男女で分けようってなったの」
極めて明快な解決策だと顧問の先生の有能さに感心しました。
「それで男女別れて活動することになったの?」
「いやそれ顧問からあいつらに伝えたらみんなやめたわ。カイトは残ったけどね。」
まぁもともとアウトドアに興味がないならそれも当然かと思いました。イケメンに群がる民族大移動、顧問というゲートキーパーの前に移住を阻止されたようです。
「それでさその時の一人と大学で一緒になってさ、あの地獄のキャンプの話題になったのよ。そしたらあのときはごめんって謝られたんよ、それでそういやこの子ともう一人の子だけ片付けしてたな~って思い出してさ」
カイト君のファンクラブの構成員でも好意には濃淡があり、友達との付き合いで入っている子もいたそうです。ここらへんの心境は私にはわかりません。
「そんで今度二人で水族館いくことになってさ」
いきなりぶっこんできました。
「まぁようするにそのこと話したかったんだけど」
ようはこの話の全てが女の子とデートにいく前振りだったということで完全にやられました。完全敗北です。最初の彼女できない話はフリだったのか……のった私がバカみたいではないか。
とはいえ、元生徒が健全な青春を送れているということで満足もしました。私のような人生にはならないようお祈りをしておきます。



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