彼女が疑っていたこと

付き合い

あのね、閉塾したことが嘘だと思ったわけじゃないの。

そう彼女は言いました。

つまり、私が嘘をついていたと思ったのは確かであり、それが何なのかを自問自答してみました。
実際の年収より多く申告していると思ったのか。思い当たることはそのくらいでしたが、婚約破棄になった後であの男は年収を誤魔化していたなんて気になるものなのか……

私が考えていると、彼女は更に言いました。閉塾したことが嘘だと思っていたわけじゃなくて、そもそも塾を経営しているのが嘘だと思ったんだよね。

そういわれて私は衝撃を受けました。そのレベルで嘘をついていたと思われていたことが分かり、なんともいえない気分になります。

同時に、だから塾をみせてくれといってきたのかと納得しました。

付き合ってる最中何回か塾を見せてといっても渋ってたでしょ。そのときは男の人ってそんなものかなと思ったけど、別れた後に余計なこといろいろ考えていると、そもそも嘘だったんじゃないかなって思っちゃって……と彼女は言いました。

私はここすごくボロイから恥ずかしくてみせらなかったんだよ。生徒にも絶望塾とかいわれていたしと説明すると笑っていました。

何のためにそんな嘘をついていたと思ってたの?と聞こうとしましたがやめました。少し怖かったからです。

彼女の目的は、私が塾を経営したことが嘘ではなく、潰れたことにより結婚がご破算になった事実を確認したかった。

いやそうでもないのか?

それで、噓じゃないって分かってよかった?悪かった?と私は聞きました。

すると彼女は斜め上をみて、フフどうだろうね?と笑いました

これ以上はもう分かりません。何もかも。
嘘つきと思われたほうがいいのかそうでないのかも自分自身分かりませんでした。

そして塾を出て、彼女を駅まで送り別れました。
時間がたった後にあの人はあのときこういう風に思っていたのかと閃くことがあります。

この日の彼女の意図も数年後、数十年後には分かるかもしれません。

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