公園の芝生で昭和の漫画のように腕を組んで昼寝をしていたところ、着信がありました。姪からです。
私はもしもしどうしたんと言いました。すると姉が離婚すると言っているので家に来てほしいということでした。
以前、義兄の風俗通いが発覚したとき以来の離婚危機です。これはえらいことだ……姉の家から様々な恩恵を被っている私にとってはまさに死活問題(しかつもんだい)。様々な物資の供給が途絶える止渇問題(しかつもんだい)です。
私はすぐに起き上がって草や土がついた服を払い、置いてある自転車へ走りました。途中へばって歩きましたが、また走りました。
交通事故に気を付けながら自転車を必死に漕ぎ姉宅に到着。姉の醸し出す空気が尋常ではなかったのでこれは立ち回りを間違えてはいけないと思いました。
とりあえず私は何も知らない顔でいつものように用もないのに寄っただけの無職という感じを出します。コーヒーを入れてから、トイストーリー5の話をしようと2階に行き、レイちゃんと話しました。
部屋に入った瞬間「やばいよやばいよ」とレイちゃんは出川哲郎になっていたので本当にやばいんだなと肌で感じます。
話を聞くと、義兄は今年になってスマホを見せたがらなくなったということです。義兄がお風呂に入ってるときにスマホの4桁のパスコードを突破した姉はラインで浮気の証拠を見たということ。
うーむこれはまずい。風俗通いよりも特定の相手との浮気のほうが性質が悪い……
「やばいよやばいよ……私が詳しく聞こうとしたら無視していてさ。それで今日からしばらく(ご飯)適当に食べなさいってまぁそれはメイに作ってもらうからいいんだけど」
家事をやる気になれないのは重症だ……私は唸りました。
「離婚とか本当勘弁してほしいんだけど……本当やだ……もう……というかさ、私トイストーリー見たことないんだけど」どんなときでも突っ込み処があるときは必ず突っ込むんだなと思いました。
レイちゃんから得られる情報の全てを得た後私はリビングに戻りました。レイちゃんは外せない友達との約束があるということで後はお願いといって家を出ていきました。
私は途中の階段で惰眠を貪っていた猫を抱っこしてリビングに行きました。空気が中和できるのでこういうとき猫は重宝します。
すると姉は「あんたレイから聞いてきたんでしょ」と話しかけてきました。猿芝居は意味がなかったようです。
私はうんそうと答えました。興味津々という態度で聞くと姉の態度が硬化するので、ここは姉が話すまで待つ姿勢で挑みます。
「最近なんか妙に優しいこといってきて、旅行しようとかペアウォッチ買おうかとか……そういうときって怪しいっていうよね。最初は気のせいだと思っていたけどラインみて確信した」私は全力で義兄の浮気を否定しましたが、あまり意味はありませんでした。私はただの勘違いかもしれないでしょと具体的なラインのやりとりの内容を聞きましたが、姉は話したくないといってそこで会話が途切れました。
「私は……別にたいした人間じゃないけど、結婚してから一生懸命頑張ってきて家のこと全部やってさ。あの人にも不満もあるだろうけど、私は誰かと浮気なんて考えたこともなかった。本当にまったく考えたことないから、もうなんだろうね……分からないよ本当……」
と姉は憔悴しきっており、怒り狂うより深刻だなと思いました。ここまで言うということは、ラインの内容は確信的なものだったのだろう……なんとか義兄と姉が離婚しないよう説得するつもりでしたが、ここまで憔悴しているとは……下手に義兄の肩を持つより私は姉の味方であることを言葉で伝え気持ちに寄り添ったほうがいいのではないかと思いました。
義兄には恩がありそれなりに親しく付き合っているが……そうはいってもどこまでいっても義兄であり、実姉とはくらべものにならない。ということで私は言うべき台詞を考えました。少々気恥ずかしいですが言わなければならない。
「姉さんさ、まだ義兄さんが浮気したって確信したわけじゃないけど、そうだとして離婚することになっても俺は姉さんの100%味方だから。頼りないだろうけどできることはする」
そういうと姉は泣いていました。
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