義姉の外見の印象はバリキャリ女性かつ神経質そうな人でした。すぐに舅が義姉に私を紹介します。するとなんと義姉は私に握手を求めてきたのです。これにはびっくりしました。
日本では挨拶で握手をするという習慣はないですし、まして女性から男性に握手を求めるなど珍しいのではないか?主語を大きくしましたが、少なくとも私は経験がありません。
これはいけない。交渉の最初の段階で相手に圧倒されていては思うような成果は出せません。
私はなんとか一矢報いようと握手に応じて、I’m happy to meet youと挨拶しました。苦笑いされると思ったし、またしてもらいたかったのですが、You tooと平然と返されてしまい、これは姉が萎縮するわけだなと納得しました。
義姉は舅の隣に座り、いきなり本題である介護の話題に突入です。
私は当然舅か姑のどちらかが介護が必要だと思っていましたが、義姉の話しによると要介護者は舅の姉。
舅の姉は子供がいなく夫に先立たれているとのこと。一人で暮らしていたが、脳梗塞の後遺症により普段の生活に人手が必要になった。
1日中介護が必要になるレベルではないし、ホームヘルパーにも来てもらっているが、役所にいったり、買物にいったりするときに身内の世話役が欲しいと舅に頼んできたということです。
そこで誰が面倒をみるのか問題になった。
舅が義姉に、おまえ定期的に見にいってくれないか?と頼んだところ、自分は仕事が忙しいので姉に頼むことを提案したらしいです。
理由としては、姉はパート、義姉はフルタイムで働く正社員であり、どちらに時間的に余裕があるかというと姉であることから時間に余裕がある人間が看るべきだという理屈であります。
しかしながら昨今家庭に入った嫁が義実家の介護をするという風潮は薄れてきており、まして今回の場合は義両親ではなく、義叔母です。
姉が嫌がるのは当然のことですが、さりとて無下に断って義実家との関係を拗らせたくない。そんな感じでしょうか。
義姉はまず自分の仕事について話しだしました。管理職として大きな仕事を任されており、今はとてもじゃないが他のことには手が回らない。
舅と姑は高齢で健康に不安があり自分のことで精一杯なので、〇〇さん(姉)に叔母のことをお願いできたらとても助かるし、本当にありがたいと言いました。
姉は私も仕事と家事で余力がないということを遠慮がちにいうと、義姉は、でも娘さん二人も手がかからなくなってるんでしょう?パートの仕事も大事だと思うけど、〇〇(義兄)の稼ぎがあれば辞めても生活に余裕あるよね?と言いました。
姉は私は叔母さんとは一度だけしかお会いしていないとか細い声でいいました。すると義姉は、そもそも私は〇〇(義兄)と話したいから来なさいといったのに、仕事で忙しいなんていってこなかった。
だから〇〇さん(義姉)が代理で来たということでしょう?と言いました。つまり、姉は義兄の代理人であるから、叔母との関係が浅いことは理由にならないという理屈です。
ここまで聞いて筋は通ってると思いました。本来なら義兄が話し会わなければならない案件であり、そこを突かれてしまったことは苦しい。
姉は私のほうを見てきました。何か言え。普段施している恩があるだろう?ここで少しでも返せという顔でした。
私も無為無策でこの場に来たわけではなく、今回の件で事前に武器になりそうなことを姪達と相談しました。まずレイちゃんに反抗期で荒れてることにしていい?と話しました。レイちゃんはなにそれ?と言ったので、姉はレイちゃんの世話で大変で心労が溜まっているし、グレて目を離すと大変なので、姉は家を空ける余力がないという設定でいきたいと言いました。
いやそれ無理だよ、私、爺ちゃんと婆ちゃんに滅茶苦茶感じいいからそんなの信じないよっていうと、ああそうかそれもそうだなと思いました。
次にメイちゃんにそれじゃ、メイちゃんが新興宗教にはまってることにしていい?と聞いたらいいわけないでしょう?と真顔で言われたのでこれも頓挫しました。
いろいろ話しているうちに、私はもっとマイルドかつ信憑性がある、姉が時間に追われている物語を考え付きました。そしてその話を義姉に話しました。